ウィーウィー

ある日 動物村のオランウータンさんは村のみんなを呼び集めました。
「話があるから広場へ来てくれ」
みんなは何事かと広場へ集まってきました。
「さて、全員集まったかな?」
オランウータンさんは木の切り株の上に立って見回しました。
みんなが集まっているのを見て満足げにうなずいたオランウータンさんは「コホン」 と咳払いをしました。
「みんなも知っているように、私はこの村を代表して外の世界を探検してきた。その報告会を開きたいと思う」
オランウータンさんはそこでまた一息入れました。

      
      

すると、一番前に陣取っていたベンガルヤマネコ氏が聞きました。
「村長でもないのに、村を代表して行ったのか?」
オランウータンさんは少しもあわてません。
「この村では私が一番賢い。私の他に外の世界を探検できるものはいない」
みんなは感心しました。
確かにオランウータンさんより賢い者はいないかもしれません。
村長のクマさんはこわい顔をしていますが、いつもゴロゴロと寝てばかりいます。

クマさんの頭の中は今日の食事のことでいっぱいでしたから、何を言われても怒りません。
村長さんになったのは順番がまわってきたからなのです。 村長さんになりたかったわけではありません。
オランウータンさんは話を続けました。
「私が最初に訪れた国ではウィと返事をする。みんなもウィと返事をしてもらいたい」
するとクマさんが「ウォー」 とほえました。
「違う違う、ウォーではなくてウィだ」
クマさんは「ウォーウォー」 とまたほえました。
オランウータンさんは根気良く教えます。
「ウォーではなくてウィー」

      
      

それを見ていたカピバラさんも声を出しました。
「キー」
オランウータンさんは辛抱強く教えます。
「ウィーだ。 ウィーウィー」
カピバラさんは一生懸命真似をします。
「キーキー」
「そうじゃない、ウィー。ほかに出来る者はいないか?」
オランウータンさんは、またみんなの顔を見回しました。

ゴマフアザラシ氏がプールから体を乗り出して聞いています。
「ワシがやってみよう。ブォー」
自分の声にゴマフアザラシ氏は首をかしげました。
「ちょっと違うようだ。ブォーブォー」
オランウータンさんは疲れてきました。
「だから、さっきから教えているようにウィーだ。ウィーウィー」
「ブォーブォー」 とゴマフアザラシ氏。
「ウィーウィー」 とオランウータンさん。

      
      

皇帝と呼ばれているカラカル氏が低い声で言いました。
「一体話はいつ始まるのだ?」
オランウータンさんもカラカル氏にはいちもく置いています。
「みんなが上手に返事ができるようになったら、すぐ始めます」
カラカル氏はあきれたように
「それなら私は家へ帰る。いつになっても始まりそうもないからな」
と言うと背を向けて帰ってしまいました。

オランウータンさんは慌ててしまいました。
カラカル氏が帰ってしまっては折角の報告会がだいなしです。
「さあ、最後にもう一度練習しよう。そうしたら報告を始める」
そう言った時は、もうみんな帰り始めていました。
「キーキー」 「ウォーウォー」 「ブォーブォー」 と言いながら家へ急ぎます。
「ビービー」と言う声さえ聞こえてきました。
残っていたのは最初から眠っていたアシカさんだけでした。

      
      

オランウータンさんはくたびれはててしまいました。
報告をするどころか、村のみんなに「ウィーウィー」 を言わせることも出来ませんでした。
「あれ?」 オランウータンさんは頭がこんがらがってきました。
「ウィーウィーだったっけ? ちょっと違うような気がする」
そうぶつぶつ言いながら、オランウータンさんも村の階段でお昼寝を始めました。






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