父さんがカンタに追い付いた時、ちょうどリュウが順一くんと『学者さん』を守って、うなり声をあげている所だった。
「ナイフを捨てろ!」と、父さんが叫んだ時、カンタがナイフを持った男に飛びかかった。
でも、ふり払われて逆に地面にたたきつけられたそうだ。
なんだか情けない。v
順一君の「行け!」という命令でリュウが男に飛びかかり、腕にかみついた。ふだんはおとなしいリュウだけど、さすがだ。
「助けてくれ!」男は悲鳴をあげた。
父さんはもう一人の男の腕をつかみ、投げ飛ばしたそうだ。
そこへパトカーが到着して犯人達は警察へ連れて行かれた。まだ16-7才の高校2年生三人だった。
警察の調べによると、三人は公園をなわばりにして、ホームレスを汚いからと殴ったり、青いビニールテントをこわしたりしてストレスを発散させていたそうだ。
『ブラック・マント』はホームレスをおそっている少年達を逆に脅して、しょっちゅうお金をまき上げていたらしい。公園で寝ている『ブラック・マント』を見つけた少年達は良いチャンスと刺し殺したのだと言う。
「これ以上まきあげられるのはごめんだ。そう思ったんです」
犯人達はそう供述していると警察の人が話してくれた。
昨日は、むしゃくしゃするので、ホームレスを殴れば気が晴れるかも知れないと、夜に公園にもぐりこみ、弱そうなホームレスを探していたらしい。
たまたま木の陰で寝ていた『学者さん』をおそったところ、リュウと父さんに取り押さえられたというわけだ。
順一君とリュウがそこにいた理由は、もどってきた『学者さん』が心配で、みまわりにいっていたからなんだって。
それまでも『学者さん』がいる間は、毎日公園に行っていたそうだ。雨上がりに、リュウところげまわって遊んだ後、泥だらけになって家で洗っている所を雄二に見られて怪しまれたんだね。
雄二は順一君をほんの少しの間でも疑った事を後悔している。
『学者さん』のけがは、幸いたいしたことはなかった。でも、家族の人がかけつけてきたそうだから、また家に連れもどされるだろうな。
「窮屈でね」と言った『学者さん』の言葉が耳に残っている。
犯人は、アヒルを殺した事は認めたけど、にわとり小屋に犬を放した事は否定している。警察も別人の線で調べているそうだ。
カンタの事もつけ加えておこう。犯人にとびかかったものの、ふり落とされて地面にたたきつけられたカンタの傷は軽かったようだ。自分で歩こうとせずに、父さんにかつがれて帰ってきた時は、母さんも姉さんも、ずいぶんと心配したらしい。
次の日あわてて岩本先生に連れて行ったところ、
「たいしたことありません、消毒でもしておけばだいじょうぶですよ」と言われた。
「なんておおげさな子なの」とすっかり株を下げてしまった。
リュウは表彰されるだろう。カンタだってナイフを発見したんだから、ほめられてもいいと、ぼくは思うんだけど。
その日の夕食はぼくの大好きなステーキだった。もちろんカンタも特大の肉をもらったさ。