大潮の浜で







波打ち際が遠くになった。
知らぬうちに潮が引いている。
砂に足をとられ、もつれさせながら走る我が子がいる。
寄せて返す波に洗われ、満潮の名残を残す浜を走る。
子を追いかけて、私も浜を走る。
裸足に濡れた砂の感触が心地よい。
大潮の満潮時に生まれた我が子はもう6歳。
あの子を産むとき、私の耳に波の音が聞こえていた。
海に守られ、育ててきた。
あの子にとって、海は第二の父であり、母でもある。
波打ち際で遊んでいても、決して波にさらわれることも無く、ボートが転覆しても溺れることもない。
例え嵐の海であっても、あの子は波をかぶることもない。
あの子は海に守られた子。
いつの日にか、海があの子を必要とするかもしれない。
その時まで、海に取られる恐怖を感じながらも、私は大事にあの子を育てよう。
海と戯れる子を見ながら、私は思う。
我が子は海の申し子なのかもしれないのだから。