あこがれ

photo by hiros



ヴァイオレット すみれ色
菫は紫色だと長い間思っていた
ヴィオラやパンジーには色々あるが
色の名前になるくらいだもの
濃淡はあっても菫は紫色
そう信じていた
ある日 白いスミレを見つけて
はっと息をのんだ
紫色の中に一輪の白いスミレ
それはあの人を初めて見た時と同じ感覚
ひと際目立った清楚な彼女
あの人にあこがれた若い日
ふと懐かしく思い出した





嫌われ者

photo by mako



色々な理由で私は嫌われている
いやな匂いがすると言われ
何処にでも出てくると罵られ
名前が悪いとまで囁かれている
何を言われても 日陰でじっと耐えている
私はめげない
いつか 私を認めてくれる人が現れると信じているから
いつか 私だけを見てくれる人がいると思うから
かわいいね と言ってくれる人がいると知っているから
私はめげない




新緑

photo by hiros



新緑の季節に山を歩くと
思わぬ発見をする
さえずりながら 鳥が空を横切り
春先に咲いた草花の後には
潅木の花が我が世を謳歌する
緑の空気を胸いっぱいに吸い込んで
花を愛で しばし世間を忘れる幸せの時
来年もまたここへ来て 至福の時を過ごそう




潮騒

photo by nomi



貝を耳に当てると 波の音がするという
静かな浜辺でみつけたこの白い巻貝からも
何かが聞こえるかもしれない
そっと耳を近づけて聞いてみる
打ち寄せる波の音にまじって
かすかに聞こえるのは 海の声
まるで私に訴えるように
その声は寂しげに響く
それは まだ海辺に子供たちの歓声が戻っていないから?
波打ち際で戯れる若者たちがいないから?
もう少し待てば人の集まる季節が来る
子供たちの走り回る夏が来る




名もなき花

photo by Rei



雑草という草はないと言われるが
私たちは ひとくくりで雑草と呼ばれている
すぐ地面から剥がされ打ち捨てられ
足で踏まれ再起不能になる
花が開けば 種がふりまかれて増殖すると抜かれてしまう
私に目をとめて可愛いと言ってくれる人がいると
それだけで幸せな気持ちになる
ありがとうと声は出せないけれど
感謝の気持ちを伝えたい
そして貴女にも幸せをと祈る




金魚

photo by hiros



おい みんな
人間の子供がきた
そばによるんじゃない すぐ捕まえられてしまうぞ
万が一 あの紙の輪に乗せられたら 大暴れしろ
運がよきゃ 紙が破れて助かるが
運がわるけりゃ ビニールの袋に入れられてしまう
その先はどうなるかって?
それは知らない
言える事は ろくな目にあわないってことさ
今の生活よりましかもしれないって?
そう思うなら捕まってみるがいい
俺は責任もてないからな




ひとり舞う

photo by mum



山里に彼女はひっそりと住んでいる
4人の付き人が彼女を包み込むように守っている
日の光を浴びようと顔を出した時でも
ひとりで舞う時でも
付き人はぴったりと寄り添って
彼女を保護しているようだ
我々に許されるのは
彼女の舞を遠巻きにみるだけ
手を触れる事はもちろん
近寄る事さえも躊躇してしまう
そんな雰囲気を醸し出して
優雅に舞う彼女の名前は ひとり静




双子

photo by mako



姉  私たち双子だけどあまり似てないと思わない?
妹  そうね 私の方が美人だわ
姉  とんでもない! 私の方がもててるわよ
    蝶々も てんとう虫も 貴女より多く来てるわ
妹  それはお姉さんの方が日の当たる場所にいるからよ
    アブラムシだって沢山来るじゃないの
姉  日が差す場所は貴女と大差ないわよ
妹  少なくとも私のところへは変な虫は来ないわ
    美人はとっつきにくいのかもね
姉  好きなだけ言っていなさい
    夏になれば地面から色々な虫が上がってくるわ
    私たちには選べないのだから
    今のうちから我慢を覚えないとね
妹  あ 蝶々が飛んできた
    黒いアゲハチョウだわ 絶対私にとまるわ
    私の方が美人ですもの




photo by hiros



大きな桜の木の幹に
細い小さな枝を見つけた
幹にしがみつくように出ているその枝は
おかあさんにつかまっている赤ちゃんのようだ
一人前に花を沢山つけて
存在をアピールしている
やがて枝は太くなり桜の木の一部になる
それまで何年かかるだろう
それまで伐られずにいるだろうか




ドレス

photo by mako



「ねえ、このドレスは赤すぎたかしら」
         「そんなことないわ とてもよく似合ってる」
「貴女のようにピンクのドレスも着たいけど
 もう歳も歳だから・・・」
         「ドレスに年齢なんか関係ないわよ
          一度着てみたらどうかしら?」
「そうしたいけど
 この赤でさえ気後れしてるのに」
         「ピンクもきっと似合うと思うわ
          私のドレスと取り替えてみる?」
「気持ちは嬉しいわ でも無理なの
 この赤いドレスは夫からのプレゼントだから」
         「あらあら ご馳走様
          そういうことは 最初に言ってね」




なぜ?

photo by hiros



カタクリの花は思う
お隣の白い花は 太陽に向かって花びらを精一杯開いているのに  私の花弁は何故反っているのだろう
地中に長くいて 花をつけるのに数年かかるのは何故?
花びらにある素敵な模様を見てもらいたいのに
どうして私はいつも下を向いているのだろう
カタクリは思う
いつかわかる日が来るのかしら






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