「今日もご主人様はお出かけだ。
いったい、いつ僕たちと遊んでくれるんだろう」
まだ春が遠いある日のこと、コルネットは窓の外を眺めながらため息をつきました。
「それに庭に出て、ゆっくりと昼寝もしたいよ。 ご主人様がいないと、家から出られないし……」
先輩格のヴィオラは、ほんわかした毛布にもぐりこみ、その柔らかい感触を楽しんでいます。
「何言ってるのよ、いいチャンスじゃないの。 ご主人様がいなければ自由にどこでも使えるわ」

「それにね」 とヴィオラは言葉を続けます。
「外には冷たい雨が降っていて、濡れてしまうのよ。
こんな日は、毛布に包まってぬくぬくしているのが一番」
そんな二匹の会話にはまるで関心を示さず、ピッコロはバスルームへと向かいます。
「バスルームに入ってはいけないと言われているのに……」
コルネットは口の中でもごもごと抗議しましたが、ピッコロは耳を貸しません。
蛇口に口をつけて、おいしそうに水をなめています。
「そんなことしちゃいけないんだよ……」
ピッコロにギョロっと睨まれて、コルネットの声はどんどん小さくなります。

ピッコロが、もう少し水を出そうと蛇口のレバーを押した途端、水が勢い良くほとばしりました。
「ニャオ―ン」
頭からずぶぬれになったピッコロは、慌ててバスルームから飛び出しました。
目を丸くしてピッコロを眺めていたコルネットにも、水がかかりました。
「濡れた体でここへ来ないでちょうだい」 とヴィオラは眉をひそめました。
ピッコロが体を何回もブルッと震わせる度に、コルネットにも水滴がかかります。
おまけに おろおろと水を止めようと蛇口の下に頭を出したせいで
コルネットもびしょぬれになってしまいました。
その時、ドアの開く音がしました。
ご主人様のお帰りです
水音を聞いて バスルームに入ってきました
「あら、まあ、コルネットの仕業ね。 こんなに水を出して……」
体中 濡れてしまったコルネットを見て、ご主人様は言いました。
ピッコロは知らん顔をして、部屋の隅で体をなめています
「ニャオーン ニャオーン・・・僕じゃないんです」 と訴えても、ご主人様には通じません。
「もう こんなことをしてはだめよ」 水を止めると、ご主人様は柔らかいタオルで優しく拭いてくれました。
そして「冷たかったでしょう」 とコルネットを抱きしめました。
「誤解されるのも悪くないかも……」 コルネットはご主人様の腕の中でそう思ったのでした。