spring


ヒメイチゲやエンレイソウも集まって
私の言葉を待っている
小さな花の小さな胸を これ以上痛めないよう
私は穏やかに話をはじめた
私が精霊としてこの地に来るのは この春限り
来年には新たな精霊が この地に現れると
小さき花達に 私は伝えた
ささめく花を前にして 私は続ける
私はかなり弱っていて
これ以上 精霊としての務めは果たせない

      
      


精霊が弱るなんて どうしてですかと花は問う
精霊だとて 永久に 存在するわけではないのだと
時が来れば消えるのだと 私は答える
ここ数年で かなり弱った私は
消滅するのが早いだけ
他の精霊達よりも
消えていくのが早いだけ
私のような精霊には
海の彼方からやってくる 黄色い風は身に堪える
まとわりついた小さな砂が
薄いピンクの衣を黄色く染め
私の体を重くする


繰り返される攻撃に
黄色い風の攻撃に
私は耐えられなくなって
今年限りで務めを終える
来年になれば この地にも
私よりもずっと強い精霊が
儚き命を守るため
か弱き花を守るため
力を持って現れる

      
      


精霊としての務めを終えた後
どうなってしまうのかと 幼い白いカタクリが
か細い声で 私に尋ねた
私は白いカタクリをそっと抱きしめ 言い聞かす
「心配はいらないよ
務めを終えたその後は
光の粒子に交じり合って
ずっとお前達を見守っている」
幼いカタクリは頷いて
雫で光る顔をあげた

この地を去る私のために
エゾエンゴサクが集まっている
さようなら 私の可愛い子供達
ずっと元気でいておくれ

もしもあなたが山奥で
儚き花を愛でながら
早春の太陽を浴びたとき
キラキラ光る粒子を見るだろう
それは 花を守る私の姿
もしもあなたがその光を
全身に浴びることができたなら
光の粒子があなたを守る
あなたが花を愛する限り
私はあなたを守るだろう

      





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