spring


僅かな時を 春と過ごして
儚き花達は 散っていく
私は少し疲れを覚え
風に身を委ねて しばし休んだ
その間にも次々と 春を知らせる花が開く
まだ務めが残っていると
私は気力を奮い立たせ
花のもとへと向かう

      
      


春の先駆けの花は 徐々に姿を消し
また 大地に還っていく
そこここに咲くエゾエンゴサクの
スカイブルーの花が私に問う
「私達はいつまでこの地にいられるのでしょう」
私は答える
「精霊の守りがある間は
たとえ一度は地上から消えたとしても
いつか また蘇る日が来る」
「精霊の守りがなくなったら……」
「この大地が存在する限り
精霊が消えることも 守りがなくなることもない」


傍らで聞いていた色とりどりのエンゴサクから
安堵のため息が聞こえる
「安心しました
私達は花ばかりでなく
土の中の茎さえも
掘り返されて 連れ去られる
この先 どうなるのかと
とても不安な日を 送っていました」

      
      


エンゴサクのささめきを後に
私は次へと向かう
白い花達が 今か今かと私を待っていた
「精霊様をお待ちしていました」
私の胸に痛みがはしる
「何か困ったことがおこったのか?」
ニリンソウが私をじっと見つめて 口を開いた
「私達は心配なのです」


ヒトリシズカも唱和する
「私達は心配なのです」
「何がそんなに心配なのか 私に話してごらん」
ヒトリシズカは集まって じっと私を見上げている
「精霊様が 心配なのです」
涙のように 白い花から雫が落ちる
緑の葉からも雫が落ちる
春の花は繊細で
私の少しの変化も見逃さない
そろそろ真実を話す時
私は覚悟を決めた

      





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