bangai


君は精霊の存在を信じている?
僕はね
小さい頃からずっと信じている
皆に笑われるから
口に出しては言わないけれど
精霊は絶対にいると思う
公園のベンチに座り
目を閉じて 耳を澄ますと
精霊に仕える風の声が
君にも聞こえてくるだろう?

      
      


精霊を探しに行こう!
早春のある日 僕は思い立った
木々の新芽が春を唄い
小さな草花が 花びらを開くこの時期
精霊は姿を現す筈だから
ウィンディーと名づけた自転車にまたがり出発する
通りがかった白樺の林で 僕は尋ねた
精霊がどこにいるか知っている?
白樺は若葉を 左右にゆっくりと揺らし
僕の頬を 風が微かに撫でた


その風を追って白樺の林を抜けると 花畑に出る
僕はここでも尋ねる
精霊を見かけなかった?
黄色い花は 一斉に頭を振った
仄かに甘い香りが 僕の鼻をくすぐった
ウィンディーを降りて 花の中に分け入る
花は一層強く頭を振り
花粉を僕に吹きかけた
僕は嫌われてしまったようだね
顔についた黄色い粉を 風がそっと落としてくれた

      
      


並木道にウィンディーを置いてしばらく休んだ
僕を待っているかのように 風がやむ
道の先には森がある
僕はふたたびウィンディーに乗り ペダルをこいだ
風の応援を背中に受け
ウィンディーは空を飛ぶように走る
森に入ると 風が囁く
「ウィンディーを降りてください
ここからは 私が案内します」
僕は驚いて振り返った
聞こえたのは風の声?
「この森は 精霊の森
ここにいる間だけ 私の声が聞こえるのです
でも あなたが森にいられるのは
ほんの少しの時間だけ
守らないと あなたは永遠にこの森から出られない」
僕は頷き 風と一緒に歩を進めた

思ったよりも森は明るい
風と共に森を歩く
突然現れた奇妙な木 ねじれた木を見て息をのんだ
どうしてこんな姿になったのだろう
僕の気持ちを察したのか
風が暗い声で答えた
「この木はいたずらが過ぎたので
森の精霊が懲らしめたのです」
僕は声を潜めて風に聞く
「いつかもとの姿にもどれるの?」
「森の精霊は気まぐれで
いつ会えるのかわかりません
この木が許されるのは いつのことか・・」
風は急に僕を抱え 森の入り口へと急いだ
「時間です 早く森から出ましょう」

      
      


森を出ると
風の声は もう聞こえない
木のベンチに座って考えた
精霊が人間の前に姿を現すことはないのだろうか
そんなことはない
僕は見た
精霊の存在する証を見た
今日は会えなかったけれど
また探しに来よう
いつか森の精霊が
気まぐれな精霊が
僕の前に姿を現してくれるかもしれない
風がきっと力を貸してくれるから
君も僕と一緒に探してみないか?






copyright©2002- 2006, aono_hiro (story)
copyright©2002- 2006, hiros (photo)