何事が起こったのか確かめようと、マザーは急いで木に登りました。
メリリンはマザーから落ちないように、全身の力で捕まります。
ここで振り落とされては大変です。
どうやら、広場では何人かが騒いでいるようです。
マザーはじっと目を凝らしました。
メリリンも一緒に広場を見つめました。
騒ぎの元は何だ?
揉め事や騒ぎを収めるのもマザーの仕事です。

         
            


群れの若い衆も木から広場を眺めています。
どうやら騒ぎの中心は、群れの嫌われ者のガッチーのようです。
「またガッチーが何かをしでかしたらしい」
若い衆の一人が顔をしかめました。
「マザーがガッチーに甘すぎるからだ」
「まったくだ。もう少し厳しくしてもらわないと我々が迷惑する」
こんな声がマザーの耳にも届きました。
何とかしなくてはいけません。


広場ではガッチーが啖呵をきっていました。
「オレサマになんか文句があるってのか?」
と、ガッチーは言っているようなのですが、ビスケットをかじりながらなので「オレハマにハンかホンクが……」 としか聞こえません。
それでも日ごろの乱暴なガッチーを知っている皆は何も言いません。
遠巻きにしてガッチーを眺めています。
泣いている子供達も何人かいます。

      
      


ガッチーが広場で遊んでいた子供達を追い払い、持っていたお菓子を取り上げてしまった事が騒ぎの始まりでした。
お菓子を取り返そうと、ガッチーに向かっていった子は振り払われて、ベンチに頭をぶつけ、怪我をしてしまいました。
それを見ていたほかの子供達は怯えて丸くなっています。
大人たちは遠巻きにしてガッチーを眺めています。
ガッチーは誰もとめないのをいいことに、広場のベンチをひっくり返したり、棒を振り回したりとやりたい放題です。


そこへもうひとりの暴れ者、ズッチーがやってきました。
どっかりと椅子に座ると、ガッチーに向かって怒鳴りました。
「弱い子供をいじめて、なに威張りくさってるんだ!」
ガッチーは言い返します。
「うるせー。オメーの知ったこっちゃねえよ」
「ケッ。弱いものいじめの卑怯者が!」 ズッチーも負けてはいません。
「なにを!」 ガッチーの顔が赤くなりました。
「かかってくるか?」 ズッチーは身構えました。

      
         


ズッチーはあり余る元気と力をもてあましていました。
ガッチーとの喧嘩は望むところです。
これでエネルギーを発散できそうです。
群れの皆に自分の力を誇示して、あわよくばゴッドファーザーになろうと目論んでいました。
ズッチーとガッチーは木の枝に飛び移ると、お互いに睨み合いました。
ガッチーは本当は戦いたくありませんでした。
ズッチーに勝てる見込みはなかったからです。
でもここで弱みをみせると、これからずっとズッチーには頭が上がりません。



事の成り行きにびっくりして、群れの皆が二人の周りに集まりました。
子供達も、おやつを食べるのも忘れて、見守っています。
「マザーを呼んで来い!」 と誰かが叫びました。
「戦わせた方がいいんじゃないか?」 という声も聞こえます。
「いや、どっちが勝っても、勝ったほうは図に乗る。群れの秩序を乱すことになる」
長老の一声で、若い者がマザーを迎えに走り出しました。


                 つづく

      





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