「おーい、どうやら生まれたようだぞ」
木に登って様子を伺っていた一族の若者が叫びました。
「男か女か?」
木の下で、ウロウロと落ち着かなげに歩き回っていた長老たちが興奮した声で聞きました。
「そんなこと、ここからじゃわからないよ」 と若者が答えます
「そりゃそうだ。 ひとつご挨拶に行ってくるかの」
長老たちは列を作って歩き始めました。
しかし生まれたての赤ちゃんに会えるわけもありません。
「まだ早い!」 と赤ちゃんの母親に一喝されて、長老たちはすごすごと戻ってきました。

         
            


それから一週間後、やっとお許しが出た長老たちは再度出かけました。
赤ちゃんは母親にしっかりと抱かれています。
「マザー、おめでとうございます」
赤ちゃんの母親はこの群れのゴッドマザーでマリリンという名前です。
長老たちの挨拶を鷹揚にうけました。
「ありがとう、これでやっと跡継ぎができた」
マザーは満足そうに答えました。


「と言うことは……」 長老の顔に満面の笑みが浮かびました。
「そう、生まれたのは女の子だ」
マザーの顔も少し緩みました。
「それはそれは、よけいめでたいことです」
長老は赤ちゃんの顔をそっと撫でました。
この群れでは、ゴッドマザーの名前の通り、トップは代々女性と決まっています。
皆、女の子の誕生を心待ちにしていたのです。
「ところでお名前は何と?」
「メリリンだ」 ボスは答えました。
「メリリンですか……。マザーとあまりにも似た名前では?」

      
      


「我が家系では、マリリンの後はメリリンと決まっている。ミリリンやムリリンよりはよかろう?」
マザーの言葉に長老は返す言葉がありません。
「皆に知らせねば」 といって群れへ帰って行きました。
「今のはだれ?」 長老達が帰ってしまうと、赤ちゃんはマザーに尋ねました。
「長老といってね、そのうちお前の手助けをしてくれるはずです」
「チョウロウ……」
「そのうちわかります。今はしっかりとミルクを飲んで丈夫で大きくなることが大事です」
赤ちゃんは、幼子特有の青い目で長老達を見送りました。


ゴッドマザーには心配がありました。
今年は赤ちゃん誕生が多く、女の子も3人生まれました。
一番強く、しかも賢くなければゴッドマザーになっても蹴落とされます。
「果たしてこの子にゴッドマザーがつとまるだろうか……」
マザーは我が子の顔をつくづくと眺めました。
「確かに賢そうに見える。が……親の目は当てにならない。確かめる術を考えなければ」

      
         


マザーの思いをよそに、メリリンはすくすくと育っていきました。
マザーの体にしっかりとしがみついて、マザーの行くところは何処へでも一緒についていきます。
一月もたつと、メリリンはマザーの背からおりて、単独で行動することも出来るようになりました。
そんなある日のこと、突然が広場で叫び声と泣き声がおこりました。
何事かがおこったようです。マザーは鋭い目を騒ぎの方へ向けました。


                            つづく






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